2025.11.19号 VOL.310
【我がごと感】はいかにして醸成されたか?
こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。
「従業員エンゲージメント」が叫ばれるようになって、
はや10年近くたつでしょうか。近年は人的資本経営に関する情報開示の
義務化と相まって、なおさら注目されるようになってきたと思います。
さて、まず結論的に私が申し上げたいのは、エンゲージメントは
「高める」ものではなく、「(結果的に)高まる」ものだということです。
弊社の体験談から、従業員が「会社が悪い」「会社が決めたことだから」
と口にしている時点で、従業員が会社のことを「我がごと」と思っておらず、
もちろん、エンゲージメントは低い状態にあります。
では、どうやって従業員が会社に対して「我がごと感」を持つように
なるでしょうか?弊社が取り組んだ試行錯誤の中から、効果があったと
思われる取り組みを、いくつかご紹介させていただきたいと思います。
①MBO(マネジメント・バイ・アウト)
会社が「他人のもの」ではなく、少なくとも同じ釜の飯を食べている
目の前にいるこの人(=弊社の場合は私)のものであること。
②ビジョン策定
私たちは、何のために存在していて、何のために頑張るのか?
の共通認識を持ち、各自の仕事とのリンクを意識化すること。
③人事制度改革
評価項目を議論しているうちはそうでもありませんでしたが、
「誰が、いくら給料をもらっているのか?」「給与原資はどのくらいあるのか?」
を認識した途端に、「自分たちの稼ぎからしか、給料は出せない」と
他責から自責に意識が変わったように感じました。
④徹底した情報開示
「1人ひとりの給料がいくらか?」以外の情報は、すべて開示しています。
接待交際費や役員報酬、現預金や借入金額もすべて弊社従業員は承知しています。
これは、健全な経営をしていることの信頼性をもたらしています。
⑤権限移譲と「管理・面倒見」の廃止
弊社は契約、値決め、発注、経費支出などを最大限従業員に権限移譲しています。
そのため、「管理」が不要です。もちろん報連相のための定例会議もありません。
また、ミスが起きないように、成長するようにと「面倒見」をしていたのも
手放しました。責任はその当事者に帰結するため、結果的にミスは減りました。
他にも試行錯誤して効果があった施策は色々ありますが、紙面の関係上、
本日は割愛させていただきます。
要するに、経営情報と権限・責任を本人に渡し、失敗も成功もご褒美もダイレクトに
跳ね返ってくる仕組みにした上で、全体最適を大切にするリーダーが運営する組織にすれば、
従業員の「我ごと感」は高まる、と私は考えています。
人材難が加速していく時代、ぜひ自社の取り組みに活かしてみてください。
編集後記
よく「一度経営者を経験した人は、もう従業員の立場に戻れない」と言われます。
これは、まさに情報と権限・責任がすべて自分の手中にあり、
何をするか、誰と付き合うか、どんなルールにするか、すべて自分で決めることができ、
失敗も成功もご褒美も、すべて自分に跳ね返ってくるからこその
大きな喜怒哀楽を味わえるからだと私は思います。
従業員に「我がごと感」を持ってほしいのであれば、
「可能な限り経営者と同じ状態に近づける」とイメージすれば
わかりやすいのではないでしょうか。
私自身もきっと、もうこの快楽からは逃れられないのだと思います。
この感覚を弊社従業員にもできるだけ共有できるよう、精進を重ねていきます。
それでは、次回もお楽しみに!
執筆者プロフィール
株式会社シンカ
代表取締役社長
田中裕也
1981年生まれ。岩手県二戸市出身。一橋大学商学部卒。2004年、新卒でシンカに入社。
上場企業を中心に20年以上採用コンサルティングに従事。訪問社数は2500社を超える。
2014年、突如代表取締役を拝命。経営改革を経て、2017年にMBOを決断。
自社の経営改革の実体験から、現在は中小企業向けの組織改革・人事制度改革・
事業計画策定・新規事業立ち上げ、事業承継等の支援や、
持続可能な社会を目指して地方で宿泊業へのチャレンジも実践している。
2025年、社会保険労務士試験に合格(登録準備中)。