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『 真価と進化 』

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2025.09.10号 VOL.300
人事制度改革の肝は、お人好しからの卒業

こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。

組織の高齢化、労働時間規制、賃上げ、最低賃金アップ等の影響を受けて、
人事制度にひずみが起きている企業様からのご相談が増えています。

今回は、弊社の人事制度改革の体験談についてご紹介させていただき、
皆さまのこれからの賃金のあり方について参考にしていただければ幸いです。

抜擢人事、看板事業からの撤退、働き方改革と進めてきた2015年頃、
会社が良くなってきた実感は得られるようになってきたものの、
まだ何か鬱屈としたものが組織に充満していました。

私はもともと課題に感じていた人事制度改革に着手することにしました。
そこで、外部のプロと契約し、「社長は口を出さない」という条件のもと
人事制度改革プロジェクトメンバーを募集し、取り組んでもらいました。
私は会議に同席して聞いているだけ。

まず、現状の何が問題なのかが話し合われました。
主な問題点は以下の3つに集約されました。

①ベテラン社員と若手社員の業務内容と待遇のギャップがある
②目標設定が自己申告制で、理想が高い人ほど評価が低く、給料が上がらない
③長期業績に貢献する業務(採用活動など)をしてくれる人が評価されない

はじめに、理想の等級制度、賃金テーブル、ざっくりした人材像が
話し合われました。すると、なんだか物足りない賃金の模様。
そこで改めて気づかされたのは、「儲けからしか、給料は出ない」
という、当たり前だけど、従業員の立場では真剣に考えたこともない結論。

すると当然、「我々は、どのような事業で、どのくらい稼いで、
どのくらい給料が欲しいのか?」という事業モデルや事業計画に話が移行。

メンバーが導き出した方針は、以下の通りでした。
・仕組みではなく、「人で稼ぐ」プロフェッショナルファームを目指す
・仕事を「まわす人」より「つくる人」に重きを置く
・「新規事業」を生み出せる「環境」が魅力な組織で必要がある

そんなコンセプトに則って、評価基準や賃金テーブルが決まっていきました。
そしていざ、新しい評価基準に基づいて、全社員を再評価し、
現状の貢献度合いに応じた等級・賃金が話し合われました。

すると、ここで議論が紛糾。
「●●さんを評価しないなんてひどい!」
「じゃあ、身を粉にして働いている●●さんには報いなくていいんですか!」

「全ての社員を『平等』に扱いたい。」どこかでこう思っているのです。
結局はバイネームで給料を見直す「お人好しからの卒業」が人事制度改革の肝なのです。

プロジェクトメンバーは嫌われる覚悟を持って、最後まで完遂してくれました。
今では人事制度の守り神となってくれていて、とても感謝しています。


編集後記

最近、大企業から中小企業に至るまで、こんな現象が起きています。

働き方改革→若手がホワイト化→中間管理職にしわ寄せ
賃上げ→若手が給料アップ→中間管理職は過去を取り戻せず
組織の高齢化→若手採用できず→中間管理職へさらにしわ寄せ

これらによって、変わってくれない会社に嫌気がさして
会社の中核を担っている中間管理職層が優秀な人から順番に去っていき、
さらに現場が混乱し、業績悪化を招いているようです。

組織は頭から腐る。
自戒の念も込めて、経営陣こそ、時代の変化に合わせて
柔軟に変わっていかなければいけない過渡期が来ていると感じています。

それでは、次回もお楽しみに!
執筆者プロフィール

株式会社シンカ
代表取締役社長
田中裕也

1981年生まれ。岩手県二戸市出身。一橋大学商学部卒。2004年、新卒でシンカに入社。
上場企業を中心に20年以上採用コンサルティングに従事。訪問社数は2500社を超える。
2014年、突如代表取締役を拝命。経営改革を経て、2017年にMBOを決断。
自社の経営改革の実体験から、現在は中小企業向けの組織改革・人事制度改革・
事業計画策定・新規事業立ち上げ、事業承継等の支援や、
持続可能な社会を目指して、地方で宿泊業へのチャレンジも実践している。