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『 真価と進化 』

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2025.03.19号 VOL.275
抜擢人事の威力

こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。

年度末を迎え、人事異動の季節がやってきました。
次はどの部署に行かされるのかドキドキしている方も多いと思います。

弊社は組織図というものを撤廃して、プロジェクト型組織に変更しましたので、
これといった組織変更や人事異動というものはありません。
案件発生ベースでその都度チームが編成され、その案件が終われば
そのチームは解散する、といった具合です。

弊社が経営改革に取り組んだ時にも、真っ先に取り組んだのはコスト削減ではなく、
まさに「人事」(not 労務)でした。
今回は、当時の変革の経緯をご紹介させていただきます。

それでは、『真価と進化 2025.3.19号』、最後までお付き合いください。


抜擢人事の威力


 10年前、弊社は厳しい状況に置かれていました。
いえ、正しくは財務的には安定していましたが、組織がボロボロに
なりつつありました。少なくとも私の目には、そのように映っていました。

 2007年にJASDAQ上場企業に救済され、2008年にはリーマンショックの煽りを受け、
実質的なリストラが行われ、優秀社員の多くが会社を見放して去っていきました。
その後、親会社の経営指導と支援のもと、財務は安定していきました。
代わりに「魂が抜けていく」ような危機感を私は覚えていました。

 当時は、営業部門とサービス部門に分かれていて、売ってくる人と
サービスを提供する人は役割分担されていましたが、
採用活動期間の制限が厳しくなり、夏は営業をし、冬はサービス提供をする、
という二毛作に社員が転換しなければ、事業継続が危ぶまれる状況でした。

 しかし、社員は深夜残業・土日出勤に追われ、とても変化に対応する
余裕すらありませんでした。そして、何とかなってるからいいんじゃないの?
という、安定ゆえに生まれる「変化を嫌う空気」が流れるようになっていました。

 それでも、二毛作に転換せずに、目の前の仕事をこなしているだけでは、
じきに行き詰ってしまうことは明らかでした。私は経営改革を訴えるも、
ベテラン社員は変化を嫌い、自分の安定を守ろうとしているようでした。

 そこで私は、改革の必要性に理解を示してくれて、
みんなが良くなる、未来が良くなるならば、自分の限界を超えてでもやります
という行動を見せてくれていた若手社員の「抜擢人事」を行い、
それらの人材を管理職に、ベテラン社員を一般社員に、大逆転させました。

 すると、改革は進むようになり、私一人が吠えている状態だったものが
各メンバーで実行されるようになり、二毛作は当たり前になっていきました。
もちろん、その間に葛藤や喧嘩、批判は多々ありました。

 それでも、業績に効果が表れ始め、全体の負荷の偏りが是正されて、
社員が「あれ、少し良くなったかも?」と感じられるようになると、
二毛作以外にも、残業削減や価格改定、研修実施や新規事業など、
新しいことに取り組める余裕が生まれ、組織が息を吹き返し始めたのです。

 組織とはいえ、とどのつまりは1人1人の集まりでしかない会社。
仕組み化や生産性が叫ばれる世の中ですが、結局は「誰がやるか」が大事。
そして、その「誰か」も見誤っては、とんでもない方向に行ってしまう。

 私が思う「誰か」の条件は、「利他性」と「未来志向」、「主体性」
そして言うならば「謎の愛社精神」のようなものではないかと思います。
もちろん一定の能力や実績はもちろん必要ですが、
一匹狼プレーヤーは良いリーダーになりませんし、
年齢を重ねているからといって人を動かせるわけではありません。

 有能なベテラン職人をリーダーにするか、利他性のある優秀な若手を
リーダーにするかお悩みの経営者・管理職の皆さん、答えは一択です。
「気づかいの人事」は、上下左右、そして当人も苦しめます。
人には向き不向きがあることは、否が応にも存在することを認識しましょう。

編集後記


人事を行うとき、色んなことが頭をよぎります。

「本当に、その人を選んでいいのだろうか?」
「あの人は、怒ってしまうんじゃないか?」
「この人も、変わってくれるんじゃないか?」

と、うなされる夜もあると思います。

答えを出そうとせず、ダメだったらすぐ変えればいいんですね。
「変わるのが当たり前」になれば、心理的ダメージは小さくなります。

安定に慣れてしまい、環境変化に対応できないことが、
生存戦略においては最大のリスクです。

やってみて、効果検証して、またやってみる。
事業も人事も、その繰り返しに尽きますね。


それでは、次回もお楽しみに!

田中 裕也