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『 真価と進化 』

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2024.12.18号 VOL.263
働かないおじさん問題を考える

こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。

円安・株高・物価高、中国経済の停滞による国内生産回帰、インバウンド等、
それらの恩恵を受ける企業のニュースを多く見かける一方で、
船井電機、サムデイ、アリシアクリニックなどの破産申請のニュースもあり、
世の中の動向に対応しきれず(個々には別の原因があると思われますが…)
業績悪化の一途をたどる企業もよく報道されており、二極化が起きています。

業績好調の企業は、コロナ禍の混乱を乗り越えて、まったりしているように
感じられ、今後どのように変革・成長していくのか、目下検討中の企業様が
多いのではないかと推察しています。

そこで、最近よく悩みを伺うのが、働かないおじさん問題です。
相当難しいテーマですので、個人的な感想レベルで考えてみたいと思います。

それでは、『真価と進化 2024.12.18号』、最後までお付き合いください。


働かないおじさん問題を考える


「パーカーを着ているおじさんはおかしい」的な話に発展しないよう
誤解のなきよう冒頭に前置きすると、「おじさんは、働かない」のではなく、
「働かない、おじさん」が問題になっているということです。

働かないおじさん問題を放置すると、生産性の低下、不公平感の増大、
若者のモチベーション低下・離職、組織の変革阻害などの問題が生じます。

でも、働かないおじさん問題は、昔から言われてきましたよね?
しかし、今再び悩みが深まっているのには、いくつかの要因があると考えられます。

①企業の業績に余裕がなくなってきて、雇用吸収する余力が小さくなった
②若者の人口減少により、中高年も現場仕事を求められるようになった
③若者を確保するために賃上げ競争が起きており、中高年の人件費が重荷
④最低賃金UPにより、パート人件費も高騰しており、中高年の人件費が重荷
⑤65歳までの高年齢雇用継続が義務化され、問題が長期化している
⑥実務に必要なスキルが変わってきており、本人に労働意欲があってもできない

実は、働かないおじさん側も悩んでいます。
私が聞いたことがあるのは、以下のような話です。

「新しい知識・スキルが必要なんだけど、今さら覚えられない」
「役職定年になって、年収ガタ落ち、必要とされていない感じがする」
「子育てもひと段落して、これからは自分ペースで働きたい」
「体も弱ってきてるし、昔のようにお金のためだけでは頑張れない」
「今さらやりたいこと・できることと言われても、考えたこともない」
「かといって住宅ローンも残っているし、まだ働かなきゃいけない」

ところで、日本の完全失業率は2.5%前後で、
3%を下回っていますから、日本は完全雇用状態です。
経験・スキルがあり、選り好みしなければ、職にあぶれることはないのです。

そして、職種別の有効求人倍率(労働の需要と供給のバランス)を見ると、
最も高いのは、建設躯体工事でなんと9.28倍。
求職者1人に対して、9社から内定が出る状態ということです。
続いて、その他技術7.56倍、土木7.16倍、保安7.15倍などと並びます。

特殊なものを除いて、最も低いのは、一般事務0.33倍。
有効求職者数は全求職者のうち20%の比率を超えていて、
「採用ニーズはないのに、みんな事務をやりたがる」という状態です。
DX化、AI化が進めば、さらに事務仕事は不要になっていくでしょう。

ご存じの通り、建設業は給料が高騰していて、
年収1000万円越えの大工さんも珍しくないと聞きます。

また、実は働かないおじさん問題だけではなく、働かない若者問題にも
企業が頭を悩ませています。

以上のことから、年齢に関係なく、働く人は働く。働かない人は働かない。
自社で働かない人は、本人が変われなくなる前に、他の道を模索できるようにする。
人手不足業界が意外と3Kでなく、事務仕事より稼げて、
やりがいも感じるという認識に変えていく。

これは、人口がいる都市→人手不足の地方でも同じことが言えると思います。

「じゃあお前がやれよ!」ということで、
私は地方で、空き家を活用して、人手不足業界の1つである宿泊業を
体と手を動かしてトライしているという訳です。
大変なこともありますが、オフィスワークでは味わえない喜びもあり、
勉強になることも多く、本当に挑戦してよかったと思っています。

企業も、個人も、変わる勇気を持って、しなやかな社会にしていきましょう。


編集後記


私が地方で人手不足産業にトライしてみて、良かったなと思った点は
要約すると3点あったなと思います。

①オフィスワークでは得られないリアルな感動がある
②普段知り合うことのない人と出会うことができた
③BtoCならではの、集客ノウハウ、リスク対策などを経験できた

これは宿泊業ならではかもしれませんが、
それぞれの業種に、それぞれの感動や学びがあると思います。
皆さんも、ぜひ。

それでは、次回もお楽しみに!

田中 裕也