2024.10.09号 VOL.253
無気力な若者
こんにちは。株式会社シンカの横田と申します。
先日石破茂新内閣が発足し、衆院の解散総選挙が今月末に行われる意向が報じられています。
支持率低迷で選挙での勝利すら危ぶまれる自民党が、新総裁の就任での期待をプラス材料に進めたい
という意向が推察されています。
個人的には今回の選挙の結果以上に、投票率が気になっております。
衆院選の投票率はここ2回微増しておりますが、15年前より15%近く低下しています。
度重なる不祥事や改善しない経済などのために、国民の政治不信・無関心が広がっているように思われます。
不信があるなら意思表示のために政治参加こそ重要なのですが、正直無理もない話だと思っています。
18歳以上に選挙権が与えられてから3回目の総裁選になりますが、
若者の政治参加でより社会が変わっていけばなと期待しております。
それでは、『真価と進化 2024.10.9号』、最後までお付き合いください。
無気力な若者
大学の学科同期に、とても優秀な友人がいます。
文系で入学しながら統計学を学び、現在都内の私立学校で数学教師をしています。
音楽・折り紙など多趣味で、学びを止めず大学院への再入学を目指しています。
そんな彼と飲んでいると、勤める学校の生徒が無気力で困っているとこぼしていました。
優秀な彼はあまりあるバイタリティをその身に宿しており、
高3の文化祭のクラス展示でほぼ一人でお化け屋敷の設計を行いながらも現役合格をするなど、
高校時代から勉強も遊びも全力だったとのことです。
そんな彼だからこそ、勉強にも部活にも行事にも力を注げない生徒への進路指導や声掛けが難しいと
ぼやいていました。
その声を聴いて、貴重な青春時代にコロナでの行動制限があった影響も大きいのかなと私は思いました。
何かやりたいと思ってもすべて自粛、自分ではどうにもならない禁止にさらされると、
いざ自由といわれても何をしたらよいのかわからなくなってしまうのかなと思いました。
昨年、24卒の採用支援するお客様から、学生が2極化しているという話を聞いていたことも思いだしました。
24卒の学生は大学生活が初めからコロナで制限されたことで、
制限の中でも工夫して努力していた学生とそうでない学生で、就活時期には成熟度に差が出ていたとのことです。
思い描いていた生活ができず、友人も作れず情報も集まらずであれば、
制限が緩くなったとしても行動が変えられず、経験が少ないままになってしまうのかなと思います。
どうやらこれはコロナの影響や日本だけではなく、最近の中国でも起こっているようです。
「寝そべり族」(タンピン)という言葉が流行語になっているとのことです。
中国の厳しい受験戦争を潜り抜けられず、あるいは潜り抜けても就職でうまくいかずに、
一人っ子で期待されていた子どもほど絶望を感じ、
仕事を辞めて「何もしない」「消費しない」でただ寝そべる、という道を選ぶ人をさします。
これらはディティールこそ様々な背景や構造をしており、単純ではないですが、
ふと大学時代に学んだ「学習性無力感」を思い出しました。
これは行動心理学者のセリグマンの有名な実験で提唱された理論です。
自身で操作できない電流にさらされ続けた犬は、次に飛び越えれば電流を避けることができる場面が来たとしても
避ける行動をとらずに電流を受け続ける、という実験です。
ここから、長期的に制御できないストレス下に置かれた場合には、回避できないことを学んでしまい、
少しの行動でストレスを回避できる環境に置かれてもその行動をとらないようになる、
という行動理論を提唱しました。
行動制限や競争社会というストレスが続くと、自ら回避できる機会があってもそれを選べない。
結果無気力になって努力で何とかなることでもできなくなってしまう。
決して一概に同じ事象とは言えませんが、似ているとことはあると思いました。
心理学では、学習性無力感の克服には、認知行動療法が有効といわれています。
「どうせ回避できない」という認知のゆがみを、自らの思考の言語化や
スモールステップの行動で解消していきます。
「自分ならできるはず」という効力感を取り戻し、行動する勇気を持たせる、という治療の方向になります。
対人であれば有効な治療法はありますが、広い社会全体の構造にはどんな治療法があるでしょうか。
ストレス社会につきものなこの現象に、何らかの解決の糸口があることを願っております。
※参考記事
▼要請通り自粛した学生ほど「無気力」として就活で切り捨てられる…「陽キャ」を求める大人の手のひら返し
https://president.jp/articles/-/74106?page=1/
▼競争に疲れて「寝そべり族」に、中国Z世代の今 なぜ極端な行動に?流行語から読み解く社会
https://news.yahoo.co.jp/articles/0800c9de125c228adb7e3d44957572e514e5889b/
▼学習性無力感とは?具体例・影響・克服方法を心理の専門家が徹底解説
https://www.awarefy.com/coglabo/post/learned-helplessness/
編集後記
優秀な彼に触発されて、大学時代の私も統計の勉強をよくしており、
せっかく勉強したから一応の箔をつけようと統計検定に合格したのもよい思い出です。
数学をあまり勉強してこなかった私でしたが、少し自信が持てました。
こうした他人のおかげで変わることもできるので、
何か環境を変えてみることも大切かもしれませんね。
それでは、次回もお楽しみに!
横田 悟