シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

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2024.8.28号 VOL.247
おばあちゃんのままでいて

こんにちは。株式会社シンカの横田と申します。

先週のお盆期間、皆さまはいかがお過ごしでしたでしょうか。
お盆を過ぎると暑さも一段落とよく言われたものですが、
まだまだ残暑厳しい日々が続きます。

台風も続けて到来しており、執筆時点では台風10号の本州上陸が予想されています。
非常に強い勢力で、各地に暴風雨の被害が生じる可能性があります。
先日の南海トラフ地震への警戒のように、
取り越し苦労でよかったと安心できるよう、被害を避ける備えが重要です。

いつか訪れる可能性が高いことに対して、心身ともに準備をしておくことが大切ですね。
今回はこのお盆休みを利用して、久しぶりに祖母に会って感じたことをお話いたします。

それでは、『真価と進化 2024.8.28号』、最後までお付き合いください。


おばあちゃんのままでいて


お盆休みに、千葉に住む祖母の家に遊びに行きました。
祖母は90歳を超えており、身体の不調は度々訴えるものの
年齢の割によく食べ、外出もできており、見た目は元気にみえます。
半年ぶりにあった孫のことも覚えてくれており、
いろいろと世話を焼いてくれる姿は私の思う祖母らしさが健在に思いました。

一見健康に見える祖母ですが、認知症が進行しております。
昨年祖父が亡くなって以降、独り暮らしとなってしまった祖母は、
母と叔母が交代で面倒を見ているものの、ひとりの時間が増えたことで
祖父が存命のころよりだんだんと認知症が進行してきました。

やり取りもその場ではできているものの、5分前の会話を覚えていられなくなっています。
先ほど母が話していたことを自分が考え付いたことのように話したり、
外出の予定も忘れてしまったり、仕舞った物の場所も忘れてしまいます。
また忘れていることすら認識できていないので、
誰かが盗んだのではないか、などと被害妄想をすることもあります。

表面的には健康でありながら意思疎通が円滑にとれる状態ではないため、
母や叔母も会話にうんざりした思いを持ってしまい、
また祖母自身も二人に指摘されると悲しそうな表情をしており、
非常にいたましい気持ちを抱きました。

認知症は大きく分けて3種類あるといわれており、
祖母は最も多いアルツハイマー型認知症の典型的な症状です。
記憶障害などの中核症状から始まり、徘徊や妄想といった周辺症状が併発、
そして段々と身体機能も低下していくといわれています。

今はまだ会話もできるけれども、近いうちにそれも成り立たなくなり、
性格も攻撃的になったり、
孫のことも誰だかわからなくなってしまうでしょう。

祖母の身に訪れる運命は、ゆくゆくは母や叔母にも、私にも必然的に起こる未来です。
もし母がそうなったら、自分がそうなったら?と考えると恐ろしいことばかりですが、
必ず向き合わなければいけません。
祖母はそういった意味でも、人生の先を歩んでいてくれています。

どんなに変わってしまったとしても、たくさんお世話になったことは色あせない思い出です。
いつか別れが来るときも、どうか自分が覚えているおばあちゃんはおばあちゃんのまま、
あといくつ残せるかわからない姿を、自分の心に刻み付けておきたいと感じました。


『名探偵のままでいて』という小説では、認知症の祖父が自らの認知症を認識しつつ、
衰えながらも才気煥発する知性で推理を披露する姿を、
主人公が憧れや愛と悲嘆を抱えながら接する様子が描かれています。
親の老化と向き合う人にとって、共感できる思いが書かれていると感じました。
続巻の『名探偵じゃなくても』も発売中ですので、ぜひ興味がございましたらお読みください。

▼『名探偵のままでいて』
https://tkj.jp/campaign/meitantei//


編集後記


学生時代は心理学を専攻していたため、
心理学の研究職に就いている友人がおり、彼は高齢者偏見について研究しています。

曰く、自分が高齢者にならないと思っている人ほど高齢者への批判的な偏見が強いという相関があるそうです。
それゆえまずは人生の先輩の姿を見て、自分も年をとっていくことへの理解によって
偏見をなくしていこうという取り組みをしているようです。

少子高齢化社会が少しでも優しい社会になるように、
彼を見習って目の前の人々を理解していきたいですね。

それでは、次回もお楽しみに!

横田 悟