シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

SHINKA Mail Magazine

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2024.7.3号 VOL.241
心の即興性

こんにちは。株式会社シンカの横田と申します。

7月に入りましたが、ジメジメとした暑さが続いております。
今年、関東の梅雨入りが6月下旬と遅かったものの、梅雨明けは例年並みの7月中旬と予想されています。
私自身の体感では、温暖化もあって今年だけではなく子どものころより梅雨入りが遅く、梅雨明けも遅くになっている印象でした。
ですが気象庁のデータからでは毎年の変動のみで、通年での変化はあまり見られていない様子でした。
もちろん温暖化の傾向で梅雨明けが後ろ倒しになっていくという予想はされておりますが、
体感的な理解とデータとでは差が出るものだと改めて思いました。

▼気象庁の観測データ
https://www.data.jma.go.jp/cpd/baiu/kako_baiu09.html/


今回はそんな直観に反するデータを提示する書籍のご紹介です。
それでは、『真価と進化 2024.7.3号』、最後までお付き合いください。


心の即興性


最近、家事などの作業中に『ゆる言語学ラジオ』を聴いております。
編集者として勤務しつつ言語学を学んでいる水野太貴と、
プログラミングを武器にしつつも衒学趣味として発信活動をしている堀元見が、
互いに読書で学んだ言語学の知識や書籍について紹介するラジオ番組です。

主に水野さんが話し手となり、堀元さんが豊富な知識で話についていく構造となっているのですが、
互いに専攻の異なる大学生が講義の知識を使って学生同士でふざけているかのようで、
懐かしい気持ちになります。
また言語学も実際我々の日常生活に根差しているため、テーマも興味深いものが多いです。
「言語学的に正しい雑談の話題」や「明治維新で楽器のオノマトペが消えた」など日本語の不思議を利用したものや、
「うんちくエウレカクイズ」など雑学が豊富に出てくる面白さがあります。

このラジオで紹介されていた、『心はこうして創られる』という本が、非常に興味深かったです。
私は大学で心理学を専攻しており、実験や質問紙調査、質的なインタビュー調査等で
人の心の動きを探っておりましたが、分析的にとどまり、ついぞ心の在り方や動きの予測はできず、
結局正体がわからないものと感じておりました。
特に私は臨床心理学を専攻しており、目の前のクライエントがどういう認知を持っていて行動しているのか、
どういう傾向があるのかを把握することに関心がありました。

著者は行動科学者として、人には内なる意識や確固たる信念や欲望などという心は存在せず、
心はその場の即興でつじつまを合わせているだけだ、と主張しています。

錯覚と注意についての実験や、感情と生理的反応はどちらが先かという実験で
いかに人間の感覚と実際にズレがあるかを示しており、
恣意的に見たいものを見ていることを示しております。

本の中身としては心理学でよくみられる実験の引用ですが、
結論がかなり行動主義的に偏っており、過激な内容になっております。

『ゆる言語学ラジオ』の二人は、心の奥底などないという主張に対して、
つまり自由意志がないとなると自我の崩壊を起こす、もしかしたら禁書なのかもしれないと
コメントしていました。

巷で流行しているMBTI診断などをきっかけに、そもそも性格とは何なのか、など
気になっている方はぜひかいつまんで読んでみてください。
研究者が一般向けに出版した本になっているため、端から端まで読み通すのは大変ですが、
「心」に興味がある方にはぜひおすすめしたい一冊です。

●心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学
著:ニック・チェイター 訳・解説:高橋 達二 訳・解説:長谷川 珈
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000353702/


編集後記


先日、両親の還暦祝いで家族写真を撮ってきました。
昔ながらの写真館があまりネットに情報が出ておらず、予約ができたのは赤ちゃん向けの撮影をメインとしているスタジオでした。

そのためスタジオはかなりインスタ映えを狙ったようなポップな雰囲気があり、
またさながらディズニーのキャストのように明るいカメラマンとディレクターで、
気恥ずかしさからか両親ともども面食らっておりました。

ただ出来上がった写真はとてもきれいで、初めての家族写真として思い出にも記録にも残るものとなりました。
両親は照れて嫌がりそうだなと躊躇する気持ちもあり、実際母親は躊躇していましたが、
結果的に提案してよかったなと思いました。

直観的にはやめておいた方がいいかな、と思うことも、実際やってみるとうまくいったりしますね。

それでは、次回もお楽しみに!

横田 悟