シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

SHINKA Mail Magazine

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2024.3.21号 VOL.226
トゥレンカムイのはからいに感謝

こんにちは。株式会社シンカの山内と申します。

まもなく新年度ですね。
「新入社員に向けて激励のメッセージをどうぞ」と振られたら、どんな言葉をかけるでしょうか?

キングコングの西野 亮廣さんは、
【会社の上司が立場上言えない真実をお伝えします】と前置きして、
・「自分から仕事を創りに行く子」と、「指示待ちをする子」は、わずか2週間で残酷なほど差がつく。
・「悩んで行動しない」を僕は1ミリも評価しない。
 (悩んだところで答えなんて出ないのに)「悩むこと=仕事と向き合っている」という勘違いをしている。
・質を高めたいのであれば「質が変化するまで量をこなす」(量質転化)が基本。
・20代で生まれた差は、一生かけても取り戻せない。
など、「行動と努力」の重要性を説いています。

世代的にはとても共感しますが、新入社員にまっすぐ伝えるには、確かにちょっと気が引けます。
どこかから、不適切にもほどがある!と聞こえてきそうです(苦笑)。

それでは、『 真価と進化 2024.3.21号』、最後までお付き合いください。

トゥレンカムイのはからいに感謝


先日、とある異業種交流会の講演で、UtaE(うたえ)さんという、
北海道清水町にお母さまとハポネタイ(母なる森)を構え、
現代を生きるアイヌの個人史採録とアイヌアートの展示やライブに
取り組んでいる方のお話を伺いました。

アイヌといえば、最近では、「ゴールデンカムイ」という、明治末期の北海道を舞台に
アイヌ埋蔵金争奪戦の行方を描いた大ヒット漫画の実写映画も上映されていますが、
映画のなかでUtaEさんは、ムックリという口琴楽器のパートも担当されています。

今日叫ばれている「サステナブルな暮らし」で取り上げられることもある縄文時代ですが、
アイヌの先祖は北海道在住の縄文人であったことや、
文字ではなく語りによって伝えられる口承文芸という文化も
現代において学ぶことが多く、私の周りでもアイヌ文化はとても注目されています。

今回は、アイヌ文化のなかで教えていただいた一つ「トゥレンカムイ」について、ご紹介します。

まず、先ほどご紹介した映画のタイトルにもある「カムイ」とは、
「人間の力では及ばないもの」=「神格を有する高位の霊的存在、神様」のことで、
「人間の役に立ってくれているすべてのもの(動物・植物・道具)」を指します。
たとえば、家を守るカムイは「家の奥さん」と呼ばれていたり、熊は「山のカムイ」と言われています。

そして、「トゥレンカムイ」とは、私たち人間の「首の後ろ」に存在する
「憑神(つきがみ)」のことを指します。

例えば、今日、自分の意志でどこかに訪れ、誰かと出逢ったとしても、
それは、事前にお互いのトゥレンカムイのはからいで出逢うことになっていたと考えるようです。

「トゥレンカムイ」は常にそばにいるので、自分の「相棒」とも言えますが、
人によってひとつのことも、複数のこともあるようです。
UtaEさんは、下記のポイントを挙げて、積極的にコミュニケーションをとるようにと教えてくれました。

①人間の意志だけでない
日々の出来事は、様々なカムイの影響を受けている。
大切な人にするのと同じように接するといいことが起こったり、
乱暴に扱うと、よくないことが起こることもある。
また、よくないことが起こっても、自分の意志だけではなく、
「トゥレンカムイ」のはからいによるものかもしれない。

②カムイと人間は対等である
対等なため、よくないことが起こったときには、むしろカムイに文句を言ってもよい。
UtaEさんも、ハポネタイを守る活動のなかで、非常に頑張っていたのに、
マンパワーも金銭面もうまくいかない状況が続いたときには、
「こんなにやっているのに、どういうこと?カムイたちよ。
私たちの関係性だからはっきり言うけど!」と伝えたそうです。
その後、いい展開が実際に来たそうです。カムイがハッとしたのかもしれません(笑)

③保険をかける
全てのもの、全てのカムイに感謝していれば、何かのときに、どこかのカムイが助けてくれるはず。
「保険料かからないので、ぜひ保険をかけてくださいね!」とのことでした。

そんなUtaEさんの将来の目標は、「トゥレンカムイ」を流行語大賞にすること、
そして、アイヌ語で国連スピーチをすることだそうです。

その背景には、「トゥレンカムイ」のことを人に伝えていたら、
忙しく余裕のない方も、身の回りのものに思いを寄せて優しい気持ちになったり、
すごく怖い顔をしていたおじさまが、「孤独で仕事で嫌なことが続いていたが、
こんなに近くに相棒がいて安心した」と泣きながら感謝されたりといった経験があったようです。

日本で昔から「八百万の神」の存在が伝えられているように、世界にはそれぞれの文化のなかにカムイと近しいものがあって、
それに一瞬でもみんなが思いを寄せられたら、日本中・世界中の人の心がほぐれ、
地球が喜び、地球が健康になり、結果的に、人間が健康になるのだと、想いを熱く語ってくれました。

小さい頃は、アイヌ民族であることを隠していた彼女は大人になってから
、 アイヌ語・アイヌ文化を必死に学び、お母さまが立ち上げたハポネタイを守りながら、
大切なことを伝える活動に邁進されています。
彼女の行動と努力は、きっと目標を実現してくれるに違いありません。

さて、ここまで読んでいただいて、本当に、首の後ろに「トゥレンカムイ」がいるのかどうか、
本当に、思いを寄せることでいいことが起こるのかどうか、
科学的に証明しないと、信じていただくことはできないでしょうか。

それ自体が真実かどうか、私としては正直どちらでもよく、そういった自分の心持ちが、
平穏と、周囲との調和をもたらし、前向きな気持ちになることができ、
結果的によい結果を引き起こすのだと思えます。

ならば信じて、「カムイ」と「トゥレンカムイ」の存在を意識しながら、
時に感謝し、時に文句を言いながら、共に生きてみたいと思います。

みなさんも今から「トゥレンカムイ」を使っていれば、
流行の先駆けとして、きっと自慢できますよ!(笑)

今日もトゥレンカムイのはからいに感謝。

編集後記


「トゥレンカムイ」は「tonoto(トノト)=お酒」が大好きなようです。
これはお酒好きには朗報ですね。
お作法はあるのですが、それは日常的にできなくてもOKとのことなので、
一口飲む前に、少し杯を首に近づけて、先にトゥレンカムイに捧げ、
心のなかで感謝を伝えてみてください。きっと、最初の一口がよりおいしくなりますよ。

お酒じゃなくても、自分がいただくものを先に捧げることでもよいそうです。
ちなみに、UtaEさんの「トゥレンカムイ」は、エビフライが大好きとのこと(笑)
みなさんの「トゥレンカムイ」の好物はなんでしょうね。

それでは、次回もお楽しみに!

山内 綾子