2023.3.29号 VOL.179
手動ドアの開きっぱなしに気づかなくなった日本人
こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。
マスク解禁を受け、新橋の飲み屋街も活況を取り戻してきました。
昔ながらの居酒屋で飲んでいると、20代のグループがハシゴの勢いで入店。
「すいません~6名なんですけど~!」・・・ドア開きっぱなし。
幹事以外の後続の人が閉めてくれるかと思うと、全く気づかず。
入口付近の中年男性が手動で閉める。
次に30代のグループが来店。「4名入れますか~?」
・・・ドア開きっぱなし。日本人店員気づかず。
中国人店員に私が閉めてほしいとお願いすると、
「すみません、ほんとに!」と日本人らしく(?)謝ってくれました。
ここに、自動化に慣れきった日本人の姿を感じました。
それでは、『真価と進化 2023.3.29号』、最後までお付き合いください。
手動ドアの開きっぱなしに気づかなくなった日本人
自動化されたものは、朝起きてから寝るまでを想像しただけでも
目覚まし時計から始まり、エアコンのOFFタイマーまで、数えきれないほどあります。
特に私が気になるのは、手動ドアに象徴されるような
「開けたら閉める」「上げたら下げる」「広げたら片づける」のように、
後始末が必要な動作が自動化されたものたちです。
居酒屋に入ってくる若者は、「座る」「飲む」「話す」用を得たいために、
手動ドアを「開ける」ことは必ず行います。でも、「閉める」ことは
用には関係ないのです。よって、「閉める」ことは意識外になりやすい状況にあります。
もちろん、これは若者に限らず、誰にでもある事象です。
それでも、その後入店するお客さんを20~30代と40代以上に分けて
観察していると、明らかに20~30代が手動ドアを閉める確率は低く、
40代以上のお客さんは閉め忘れに気づく確率が高いのです。
これは、若者が悪いのではなく、幼い頃から「ドアは自動で閉まる」ことに
体が慣れてしまっているからだと私は感じました。
ChatGPTの登場により、これから人間は自動で考えてもらえることに
慣れていくことになります。まさに「思考の自動化」です。
しかし、先日IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が報告した
「気候の時限爆弾」を抱える人類は、2030年には19年比でCO2排出量を約半分、
2050年にはカーボンニュートラルを達成しなければいけない状況です。
すると、「自動化」を支えるエネルギー消費は抑制しなければなりません。
であれば、「よく考えたら、自動ドアじゃなくて、手動ドアでもいいっか。」
と見直されることがたくさん出てくると予想されます。
その時、重宝されるのは「開いているドアに気づく」人間のはずです。
それでも、自動化は急激に進んでいくものと予想されます。
なぜなら、「時限爆弾は明日爆発しない」からです。
時限爆弾が爆発した時に、生き延びられる人間であってもらうために、
若者に「ドアの開きっぱなしに気づく」習慣を身に着けさせるのは
うっとうしがられても果たすべき、おせっかい昭和人間の使命かもしれません。