2022.4.13号 VOL.133
言葉は無力か
こんにちは。株式会社シンカの山内と申します。
ここ最近、季節を先取りしたような気温が続いておりますが、
暑さにまだ身体が慣れておらず、服装にも悩んでしまいますね。
紫外線も真夏の約7割の強さとか…。
ゴールデンウイーク頃も高温傾向のようです。
今年はきっとお出かけをされる方も多いでしょうから、
春の熱中症にはくれぐれもご注意くださいませ。
それでは、『 真価と進化 2022.4.13号』、最後までお付き合いください。
言葉は無力か
海外で暮らしている高校時代からの親友が、昨年出産し、
可愛らしい写真がついたポストカードも送ってくれ、
私も非常に嬉しい気持ちでいたのですが、その数か月後に、
難病が見つかった、完治はなく楽観的な状況とはいえない、
心を痛めているとの連絡が入りました。
一か月後、病院で沢山の検査をしたところ、世界に100人くらいしか存在しない
稀な難病で、初めて発見されてからまだ10年も経っていないため未知の部分が多く、
見る話す歩く等の基本的なことも出来ないかもしれない、
大変なことになってしまった、と報告をしてくれました。
それでも彼女は、「でも大丈夫、母(私)は元気です!きっと彼女の
ペースで少しずつ成長していってくれると信じています」と、
恐らく不安もいっぱいのなか、前向きな言葉を私に伝えてくれました。
今すぐ彼女のいる地まで飛んでいって、抱きしめたい気持ちで
いっぱいになった私は、それも現実的にできないなか、
どんな言葉をかけていいか、適切な言葉が見つかりませんでした。
結局、シンプルな、ありきたりな言葉しかかけることができず、
本当に伝えたいときほど、言葉はなんて無力なんだと、
そして、表現しきれない自分の至らなさに無力感で覆われていました。
そんな折、ふと偶然、本好きの知り合いが差し出してくれた一冊に
救われたので、皆さんにもご紹介いたします。
「まとまらない言葉を生きる」荒井 裕樹 (著)
本書は、マイノリティの自己表現をテーマに研究を続ける文学者が、
いま生きづらさを感じているあなたに、そして自らに向けて綴った、
18のエッセイで構成されています。
その1つのタイトルが、「励ますことを諦めない」でした。
たとえば東日本大震災のとき、
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きっと、あの時、多くの人が「被災者の力になりたい」「励ましたい」と願ったことだろう。
でも、「がんばれ」なんてありきたりな言葉は、
被災者に対して失礼な気がする。
励ましたいけど、傷つけたくない。そんな葛藤からだろうか、
みんな慎重に、あるいは怖々と、言葉を選んでいたように思う。
あれからずっと、モヤモヤと考え続けてわかったのは、
どうやらぼくらが使う日本語には「純粋に人を励ます言葉」というものが
存在しないらしい、ということだった。
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でも、不思議なもので、ぼくたちは普段から
「誰かの言葉に励まされる経験」をしている。
やっぱり「言葉が人を励ます」ことは確かにあるのだ。
だから、「言葉は無力だ」と絶望することはない。
言葉を信じて、「言葉探し」を続けたらいい。
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どんどん言葉が簡略化され、手っ取り早く、効率よく、
言葉ですらも「コスト・パフォーマンス」が求められますが、
ひとつの言葉が、誰の心にもぴったりと当てはまるはずなんてない。
だからこそ、そのたびに言葉探しをすることを諦めない。
「ある言葉」ではなく、「ない言葉」を模索する。
その勇気を、この本からいただきました。
編集後記
「人を励ます言葉」のワークショップで出てくる不動のトップ3は
「がんばれ」「負けるな」「大丈夫」らしいのですが、
「励まし表現」の代表格だと思っている言葉も、時と場合によっては、
「人を叱る言葉」や「人と距離をとる言葉」にも姿を変えてしまいます。
尊敬している方が以前、「使う言葉にその人が出る」とお話されていて、
意識はしているもの、自分の発した言葉が
ブーメランで返ってきたらと思うと…、まだまだ修行が足りません。
それでは、次回もお楽しみに!
山内 綾子