シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

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2021.12.01号 VOL.115
We have nothing?We have everything?

こんにちは。株式会社シンカの山内と申します。

今日から12月。
年末年始は久しぶりの帰省を予定されている方も多いでしょうか。

当たり前の日常が、当たり前でないことに気づかされたこの2年。
大切なご家族との久しぶりの再会は、
より一層感慨深いものになりそうですね。

それでは、『 真価と進化 2021.12.01号』、最後までお付き合いください。



We have nothing?We have everything?


「ないものはない」

このスローガンで有名な、島根県隠岐郡海士町をご存知でしょうか?
今回、多くのご縁が重なり、初めて訪問することができました。
ぜひ一度訪れていただきたく、概要を一部ご紹介いたします。

■離島から日本を変える。
海士町は島根県本土からおよそ60km離れた隠岐諸島の中にあります。
有人の4つの島のうち2番目に小さい島で、人口は約2,200人。
2011年に掲げられたスローガンには2つの意味があります。
「ないものはなくていい」
「大切なものはすべてここにある」

財政破綻してもおかしくない状況にあったなか、当時の町長が中心となり、
「自らの身を削らない改革は支持されない」と町長50%、職員30%の
給与カットをはじめとるする大胆な行政改革を断行し、
その余剰で産業を起こし、立て直しを図りました。

全国各地で平成の大合併が推し進められるなか、
島が「自立」することを選び、独自のプランで、産業振興などのプロジェクトに加え、
「町の活性化にはよそのもんが必要」と移住者の定住促進にも力をいれ、
よそ者を受け入れる気質も功を奏し、島民の中で移住者が1割を超える島になり、
地域に新たな力を生み出すことに成功し、注目を集めています。

■「人づくり」からの「まちづくり」。
10年前、地域に唯一の高校が廃校の危機を迎えていました。
高校が廃校になると、高校生が地域からいなくなるだけでなく、
働き盛りの親たちが家族ごと島を出る…。

暗い未来が予測されるなか、3町村が協議し、活路を見出したのは
生徒が行きたくなる、保護者が行かせたくなる、地域が活かしたくなる、
そんな「魅力的な学校をつくる」ことでした。

様々な立場や意見の違いがある中、生み出されたのが「島前高校魅力化プロジェクト」。

日本各地から意志ある入学者を募る「島留学」制度や、
地域住民が島留学生の支援をする「島親」制度、
山積する地域課題にチームで協働的に取り組む課題解決型の探究学習の構築、
学校・地域連携型公立塾「隠岐國学習センター」の設立など様々な取組を進めています。

現在、島外から島前高校の入試倍率は、2倍ほどになっているそうです。

■実体験に勝るものはない。
今回の訪問では、埼玉県や宮城県から島前高校に入学した女子高生2名に、
地域周遊のガイドをしていただきました。

「ここでは、考えたことを、実際にやらせてもらえる」

自ら感じ、考えたことを、実際に動くところまでやらせてみる。
大人は、任せて、必要な支援をする。

人は育てるのではなく、育つのだと、実感させられました。

他にも、島留学制度を利用して、1年間インターンに来ている女子大生は、
地域通貨ハーンの普及について、自分が描いているビジョンと、
行政や住民との連携について、なかなか思う通りにいかないなか、もがき悩んでいました。
それでも、意志をもって前を向いている姿に、
我々大人ができることは、彼女たちの邪魔をせず、
そっと背中を押してあげることだと強く感じました。

■成功事例なんて一つもない、あるのは挑戦事例だけ。
2021年7月、海士町に新施設が誕生しました。

ジオパークの拠点機能と、その絶景を享受できる宿泊機能をもつ「Ento」。

2017年の「海士町観光基本計画」制定を受け、日帰りが難しい離島観光の
最重要施策は宿泊施設の充実であり、インバウンドを含めた今後の需要に対応できるよう、
48年に渡り使用されてきた別館を解体し新施設の建築を企図する
「ホテル魅力化プロジェクト」が立ち上がったことがスタートでした。

海士町政史上最大規模の投資額に、当初島民の反対も少なくはなかったものの、
様々な対話を続け海士町が取り組んできた「人づくり」と「仕事づくり」をつなげる舞台として
実現に至ったそうです。

地域活性の成功事例として、華々しく見えるその実情は、
多くの対話と、未来への意志と、挑戦し続ける彼らのエネルギーの結晶でした。

小さいながらも大きな馬力を持つタグボート(曳舟)のように、
「ないものはない」を海士町から日本中に、世界に広げていきたい。

海士町の挑戦は、これからも続いていきます。


編集後記


顔が見える関係性だからこそ、
賞味期限が近い商品から買うのが自然だったり、
道路の倒木を行政任せで放置せず、住民自ら協力しあって移動したり、
高校生が歩いていたら「どこまで行くの?乗っていきなさい」と声がかかったり。

「コンビニはないけど、不便と思ったことは一回もない」

そんな島前高校の生徒さんの言葉が印象的でした。

今回はご紹介できなかった、山まるごと放牧のお隣の島西ノ島町や、
「愛とは?」「自分の弱みは?」の問いが張り出されている
隠岐國学習センターの「夢ゼミ」など、実際に触れていただきたい魅力が満載の島。

帰ってきたばかりですが、もうすでに近々再訪したくなっています。
ご興味をお持ちの方は、ぜひご一緒しましょう!

それでは、次回もお楽しみに!

山内 綾子