2020.12.16号 VOL.69
コロナ禍でのテレビドラマに求められる傾向
こんにちは。株式会社シンカの稲村と申します。
年の瀬になると「昨年の今頃はどうしていたかな」と振り返る方が多いと思いますが、
今の状況を予想されていた方はいらっしゃらないと思います。
日常がすっかり様変わりしてしまいましたが、エンタメ業界でも制約された状況の元、
人々の癒しになるような、勇気づけられるようなコンテンツ創りに
思考錯誤しながら尽力されている事と思います。
今回は、特に自分が好きなテレビドラマに絞って私なりの見解を綴ってみたいと思います。
それでは、『 真価と進化 2020.12.16号』、最後までお付き合いください。
コロナ禍でのテレビドラマに求められる傾向
今年、特に4月始まりのドラマは、緊急事態宣言により撮影が出来ないという状況が続きました。
1月から放送していた朝ドラや大河ドラマも撮影中断となり、放送できる作品が無くなると
それまでの放送回に副音声で出演者の解説をつけて再放送したり、
過去の戦国時代作品の特集を組んだりと、創意工夫して穴をあけない様に放送されました。
過去の名作ドラマの再放送も多くありましたが、ただ再放送するだけでなく、
未公開シーンを入れたり、出演者の同窓会的な企画を入れたり、
コロナ禍を逆手に取ったリモート撮影のドラマへの挑戦など、
工夫を凝らして、視聴者が楽しめるものを提供してくれました。
これにより、視聴者側は違う角度から作品を観ることが出来、新たな発見もありました。
私も制作側の気概を含め「やっぱりドラマ、好きだなぁ」とあらためて思わされました。
撮影日程が大幅に狂ったため、放送時期をキャッチできずに見逃してしまった作品も
あったかと思いますが、この12月に多くの作品が最終回を迎え、
スケジュール的には通常営業に戻りつつあります。
そんな状況の中、どのような作品が好まれて観られていたのでしょうか。
視聴率ランキングと話題作が必ずしも一致しないのが興味深い所です。
私の友人周りに絞って聞いてみると、この冬ドラマで多く観られていたのは下記3作品でした。
・共演NG(テレビ東京)
・極主夫道(読売テレビ、日本テレビ系)
・ルパンの娘(フジテレビ)
かなり限られた調査範囲ですが(笑)、どのような共通点があるでしょうか?
私が特に注目して観ていたのが『共演NG』です。
秋元康さんの企画・原作で、中井貴一さん、鈴木京香さん演じる
25年間「共演NG」だった元恋人の大物俳優がなぜか再共演するというもの。
この前情報だけでも私は充分に興味をそそられたのですが、
スポンサーは1業種1社という暗黙のルールがある中、
キリンとサントリーが異例の共演OKとなり、それを提供クレジットで毎回趣向を凝らして読み上げる
といった事でも話題になりました。
制作陣だけでなく、営業部門の頑張り、スポンサーの度量の大きさ、
「おもしろいものを世に送り出したいんだ」という関係者皆の気概が感じられました。
この作品の中で自分が好きなシーンをひとつ挙げるとすると、
最終回で総責任者がショーランナー(※)に声を荒げるシーンです。
話題性重視で、演者やスタッフに無茶ぶりばかりのショーランナーに対して
演者が希望する難しい条件を叶えるために交渉事をお願いするのですが、
この方、ドラマ愛は端々に感じるものの総責任者とは名ばかりで、
決して頼りになるリーダータイプではありません。
そんなキャラの彼が、現場のプライドをかけて怒鳴るのです。
※ドラマのキャスティングや脚本、話題作りや広告などあらゆる方面からドラマをヒットさせるための仕掛けづくりを行う者
普段頼りないキャラや、敵対側かなと思っていたキャラ(特に中年以降の)が、
若い頃に置いてきた信念が呼び覚まされて奮起するようなシーンが大好きなのです。
「もぅ、主人公側と同志じゃないかぁ」と胸が熱くなります。
この作品の場合、ショーランナーも実はこっち側の人間だったことが最後に分かるので尚良し。
さて、先ほど挙げた3作品の共通点は・・・。
設定や展開など、突っ込みどころは満載でも、
1本筋の通ったところが感じられるので嫌いになれない、
突っ込みつつも、最後には胸が熱くなったり、スカッとしたり、キュンとしたり。
『半沢直樹』も前作よりも演出が大仰でしたが、スカッと感は増していました。
『半沢直樹』は時代劇だと思ってみると楽しいという評判をよく目にしました。
こんなご時世、リアリティのある作品よりも、素直にフィクションとして楽しめる作品を
求めているのかも知れません。
編集後記
本編で紹介したような、隠れ胸熱同志は、皆さんの周りにもいるかも知れません。
しかしながら、厄介なことにこのキャラは、何らかのトラブルやハプニングが起こらないと
なかなか顔を出してくれません。
どうかトラブル・ハプニング小さめで、同志と気付けますように!
それでは、次号もお楽しみに!
稲村 祥子