シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

SHINKA Mail Magazine

← 一覧にもどる
2020.09.24号 VOL.57
美味しくいただくということ


こんにちは。株式会社シンカの菅原と申します。

今回は狩猟をテーマにした体験記をお送りしようと思います。
(誰も追いかけていないと思いますが、2020.1.29号の続きとなります笑)

それでは、『 真価と進化 2020.09.24号』、最後までお付き合いください。


美味しくいただくということ


昨年10月に趣味で狩猟免許をとったものの、
しばらく先のことだと高を括っていた、生命と向き合うタイミングは
想像よりもずっと早く、今年の9月に来ました。

イノシシやシカの被害に苦しんでいる、
小田原市で果樹園と林業を営む農家さんとご縁ができ、
今年の8月から罠猟を開始しました。そしてちょうど一ヶ月経った頃、
子イノシシが6頭掛かったと農家さんから連絡がありました。

前日の夜、生命を殺めることになるんだと想像したときから、
胸のうちにザラザラとした嫌な感触があり、
翌日8時間かけて、止め刺し、解体を行っている間もそのザラザラは残ったままでした。


害獣被害に苦しんでいる農家さんがいて、被害額は年々増加していること、
普段肉を食べている自分が悩むのは欺瞞だということ、
どれも頭では整理ができていても、心がNoと言っているのです。

おそらくそのザラザラは、自分の倫理観が根源になっているんだろうと
カントやベンサムが持つ動物の生命に対する考え方を調べてみても、
イマイチしっくり来ません。

そんなザラザラが解消したキッカケは、新渡戸稲造著「武士道」でした。
作中で新渡戸が、「礼は他を思いやる心が外へ表れたもの」と言っているように、
私自身が持つ、動物の生命を思いやる心を、欺瞞だとどこかに追いやるのではなく
礼、つまり作法として、体現することが大事だと思うようになりました。

葬儀の在り方が同じ仏教でも流派によって異なるように、
動物の生命を尊ぶ作法も様々あるのだと思いますが、
私にとって(おそらく多くの人にとっても)馴染みのある作法は
・いただきます
・ごちそうさまでした
・残さず食べる
の3つです。

敢えて食べるのだという自覚を持ち、
有り難みを感じて、残さず、美味しく楽しく食べることを通じて、
生命を尊重する心を体現していきます。

編集後記

狩猟される動物の生命を尊重するという道で、
先駆者がいないかと、狩猟関係者に聞いてみたところ
君津市で狩猟ビジネスを行っている、原田さんという方の名前をよく耳にしました。

聞くところによると、
年間80万頭の野生動物が「駆除」され、ほとんどが野山に埋められるか、
焼却処分されている現状に課題意識を持ち、
駆除個体の100%利活用を目指しておられ、
過去には供養のための神社を立てようとしたほどの方とのこと。

狩猟シリーズ第三段で取り上げるべく、取材に行こうと密かに画策しています。

それでは、次号もお楽しみに!
菅原 隆