シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

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2020.08.19号 VOL.52
「共感力」、鍛えていますか?


こんにちは。株式会社シンカの吉岡と申します。
40度を超える最高気温を記録する場所も出るなど、非常に暑さ厳しい中ですが、
皆様はいかがお過ごしでしょうか。

例年ならば、帰省にレジャーにと出掛けるところが、
今年は新型コロナウイルスの影響で家にとどまる時間が増えた方も
多かったのではないでしょうか。

そんな中、私も空いた時間で本でも読もうと訪れた書店で
「一生モノの課題図書!」という帯に惹かれて購入した1冊の本から感じたことを、
今回はご紹介したいと思います。

それでは、『 真価と進化 2020.08.19号』、最後までお付き合いください。



「共感力」、鍛えていますか?


今回ご紹介する本は、ブレイディみかこさんの
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」です。

後で調べたところ、Yahoo!ニュースの「ノンフィクション本大賞」を含めた各賞を受賞し、
また有名テレビ番組でも特集を組まれるなど、一部話題になっているようなので、
ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

内容を少しご紹介しますと、この本は日本人のブレイディみかこさんを母に、
アイルランド人の元金融マンで現大型ダンプ運転手を父に持ち、
東洋人の顔だちを持った「ぼく」が、イギリスの地方都市の
「元(最近は中くらい)底辺中学校」で遭遇した日常を綴ったエッセイです。

人種差別や貧困、LGBTQといった難しい問題に、自分自身の経験という意味で
まさに体当たりで、時に軽やかに乗り越えていく「ぼく」の姿は、
私にとっては非常に清々しく、貧困の中にいる友だちに
「どうして(制服を)僕にくれるの?」と聞かれ、言葉に詰まるみかこさんの横で
「友だちだから。君は僕の友だちだから」と「ぼく」が言ったエピソードは
胸に迫るものがありました。

気になった方は、ぜひ読んでいただきたいのですが、
そんな印象的なエピソードや言葉が数多くある中、私が一番気になったのは
「『共感』には『シンパシー』と『エンパシー』がある」ということでした。

本の中で著者が引用したオックスフォード英英辞典のサイトによると、

「シンパシー」:感情や行為や理解のこと
1.誰かをかわいそうだと思う感情、誰かの問題を理解して気にかけていることを示すこと
2.ある考え、理念、組織などへの指示や同意を示す行為
3.同じような意見や関心を持っている人々の間の友情や理解

「エンパシー」:能力のこと
1.他人の感情や経験などを理解する能力

とされており、著者は「シンパシーは自然に出て来る感情で、
エンパシーは自分と違う人々が何を考えているのか想像する力」としていました。

「共感」という言葉を、皆様はどのように使われていますでしょうか。

振り返ってみると、私は「共感」と言うとき、
「シンパシー」と「エンパシー」の意味を一緒くたにして使っていました。

昨今のコロナ禍しかり、悲惨な現実や困難な状況に対して知ろうとしたり、
理解しようとしたりはするものの、心のどこかで、当事者と同じレベルまで
痛みを感じたりわかったりすることは無理なんじゃないか、
そんな自分は冷たいのかもしれないと、どこか後ろめたい気持ちを持っていました。

なので、この本を読んで

「『共感』には勝手に沸き起こる『シンパシー』と
 理解しようと努める『エンパシー』があり、『エンパシー』は鍛えられる」

そう考えると、私は楽になりました。

自分と異なる考え方や背景を、感情ごと全て受容しようとすると
「私はそんな心の広い人間ではない」「共感できない自分は冷たい人間なのでは」と
思いがちでしたが、そうした場面で必要なのは
「理解する、もしくは理解しようとする能力である」と分けて考えると、
後者の「共感力」は磨けるのではないか。

世の中にある「格差」や「分断」にシンパシーを感じて、
「〇〇が悪い」「△△のせいだ」と言うのではなく、
「エンパシー」を働かせ、「ではどうすればいいのか」、
小さなことで構わないから少しずつ積み上げていく、
そんな風にしていきたいと、強く思ったのでした。

編集後記

そういえば、まだ言葉を十分に話せない息子(もうすぐ2歳)の場合は、
「シンパシー」と「エンパシー」はどのように存在しているのか?と思い、
最近あったことを思い出してみたところ、

・身内に不幸があり泣いていた私を見て、泣いた
・息子が振り回した手押し車に足の指を踏まれ痛がっている夫(父)を見て、泣いた
・息子が危ないことをしたので叱る私を見ても、へらへらと笑っている

「悲しい」という感情が「怒り」よりも「シンパシー」を感じやすいのか、
はたまた「エンパシー」が未熟なので私が怒る理由がわからずへらへらしているのか、
言葉が話せないので真相は不明ですが、2歳でも何かしらの
「共感」はしているようです!

それでは、次号もお楽しみに!
吉岡 佑里子