シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

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2020.03.23号 VOL.10
長所は短所、短所は長所?


こんにちは。株式会社シンカの吉岡と申します。

東京では、観測史上、最も早い桜の開花宣言が出る一方で、
同じタイミングで雪が降る等、まさに「三寒四温」という言葉通りの
不安定な気候が続いていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

今回は、私の好きな絵本作家さんの話を通じて、
「長所」と「短所」について考えた話を、ご紹介したいと思います。

それでは、『 真価と進化 2020.03.23号』、最後までお付き合いください。


長所は短所、短所は長所?

現在、1歳半の子どもが生まれてから、興味を持ったものの1つに
「絵本」があります。

自分が読む本については、持ち運びのしやすさからKindle等の
電子書籍にすることが多いのですが、絵をじっくり眺めたり、
子どもにもわかるように丁寧に吟味された言葉を味わったりするには、
やっぱり「紙の絵本」がいいなと、個人的には思っています。

そんな中、最近、私のお気に入りの絵本作家さんの中に、
「ヨシタケシンスケ」さんがいます。

もともとイラストレーターとして活動されていましたが、
絵本デビュー作の『りんごかもしれない』がMOE絵本屋さん大賞第1位を獲得。
以来、年に1~2冊程度のペースで発表される新作も毎回好評なので
既にご存じの方も多いかもしれません。

そんなヨシタケさんの絵本を私が好きな理由の1つに、
「視点の多様さ」があります。

例えば、前述の『りんごかもしれない』では、
男の子がテーブルの上に置かれたりんごについて、

「もしかしたらこれは、りんごじゃないのかもしれない」
「では、なんだ???」

と、次から次へと脈絡なく空想する姿が描かれています。

それを読んだとき、奇想天外な男の子の発想に笑いつつも、この男の子のように
1つの物事について「○○かもしれない、△△かもしれない」と、
「想像力」をもって多様な視点から物事を見てみることが
大事なのかもしれないと考えさせられました。

そんな経験から、「多様な視点を持てる、想像力のあるヨシタケさんはすごい!」
という思いが生まれ、私はすっかり魅了されたのでした。

しかし、先日読んだヨシタケさんのエッセーの中で、
ヨシタケさんはご自身の「想像力」について、別の見方をされていました。

・「想像力」というのは、良い方面にも、悪い方面にも働く
・自分の場合は、悪いニュースを見ると気分が落ち込んだりと、
 悪い方面へ働くことも多く、何もしないとどんどんテンションが落ちてしまう
・なので、自分のテンションを上げる為、精神衛生を健全に保つ為に、
 日々起こる面白いと思う事柄を書き留めている

私はてっきり、「この視点は面白いと思うから、みんなに共有したい!」のような
明るいテンションで絵本が作られていると思っていたので、
そんな背景や理由によって、物語が紡がれていたとは夢にも思いませんでした。

私にとっては魅力に感じる「想像力」も、ヨシタケさんにとっては
なんとか折り合いをつけて暮らしている「癖」のようなもの。

長所は短所、なのかもしれない。
短所は長所、なのかもしれない。

「多様な視点」の難しさを、やっぱり痛感したのでした。

編集後記

新型コロナウイルスの感染拡大によって、規模や深刻さの程度の差こそあれ、
様々な制限を強いられたり、不安を感じたりされている方も多いと思います。

一概には言えませんが、この危機に瀕して、苦しいながらもやってみたことが
今後、何かの問題解決のヒントになる日も来るかもしれません。

そんな明るい未来を祈りつつ、次号もお楽しみに!

吉岡 佑里子